先日、【いま考えたい観光と地域資産の関係性】の記事で観光業に対しての違和感、外から訪れる観光客向けの街づくり、産業づくりに「ちょっと待ったー!」を言いたいがために書きました。
だがしかし、敢えて反対に、観光業を前向きに捉える視点もここで論じたいのです。持論を世に主張するだけでなく、物事には多面的な側面があって、どう考え・捉え・行動するかは個々にゆだねられていると示唆したく
別の論調も主張させてください。
第三次産業以降の産業に頼りたい世情。
産業を大きく分類すると、ペティ=クラークの法則より第一次、第二次、第三次産業以降に分けられます。
第一次産業は、自然界に働きかけて作物を作ったり採取する産業(農業・林業・漁業など)、第二次産業は主にものづくりで自然界から採取・生産した原材料を加工する産業(工業・建設業など)です。
経済の発展に伴い、より人間の知恵で高付加価値をつける産業へシフトすると言われ、第一次から第二次、第三次産業へと日本の主力産業が移行したのも、その流れに違わないでしょう。
第三次産業は、第一次産業と第二次産業のどちらにも当てはまらず、商業・小売業・金融業・運輸業・情報通信業・サービス業など観光も含まれる無形財の産業です。商品やサービスを分配し富を創造する点に特色があります。
私達の暮らしの体感でも、自然界で採取する食料や材料にかけるお金の割合は減り、さらに昔と比べると物を購入する額も減り、モノよりコト消費と言われる現代は第三次産業にかけるお金も時間も増えてきました。
上記グラフの第三次産業の労働力増加からも、いかに無形財が経済を席巻しているかがわかります。
観光業が最先端の理由。
国土も資源も限られる日本で、第一次産業の生産活動を強化するにも限界があるし、国内の人口減少から爆発的な需要ものぞめない。第二次産業も同様、モノはやや飽和状態。さらに持続可能な社会を目指す昨今では大量生産大量消費や破棄は望むところではない。
これまでと同様もしくは現状以上の経済をまわすには、第三次産業以降にかかっていて、他国にない文化資産を活用し、宿泊・運輸・飲食・旅行業など様々な分野にまたがる観光業が手っ取り早く広範囲に経済効果を及ぼすでしょう。
なので、観光業自体には無論、罪はありません。むしろこれからを考えると、地域特有の文化を様々な形で体験してもらうことで、お金を循環させ、より盛り立てるべきでしょう。
生産活動のオートメーション化が進むと、より知的な活動が人に求められ、知を得るための体験の需要が高まる。
また、テクノロジーの活用による効率化により、人の余暇も増えるので余暇の過ごし方に関する産業は、今後伸びていくことは予想されます。
ただ問題なのは、観光業のつくり方。特有の文化を無くすような商品開発・サービスづくりは、長期的に見ると観光業を衰退させ、地域を破滅させます。
地域にまつわる情報、その場所で何を体験してもらい、伝えたいか。
生活必需ではない観光業は、本質的な価値を問われる高度な産業です。
観光業は文化発展にも、きっと平和にも貢献する。
そしてもうひとつ言及したいのは、観光は文化の発展と世界平和につながるということ。
実際にその場所に行って、街の様子や生活や文化を見聞きして、普段の生活とは違う訪問先特有の食べ物をいただき、異文化を理解しようとする行動はとても高度だし、学ぶことは多い。
自国の文化を違う視点で見つめるきっかけにもなるし、新しいアイディアを取り入れる機会にもなる。長い歴史の中でも、異文化交流で発展した美術や食や建築様式や工芸など数知れない。日本の産業革命は、西欧の先進技術導入で進みました。異文化交流が無ければ、日本は鎖国下の江戸時代から劇的に発展することはなかったでしょう。
また観光によって相互理解は多少なりとも深まります。積極的に観光で知ったり知られたり、行き来するようになれば、他国や他府県の街も思い出が深くなり、人間関係もでき、簡単に攻撃することも無くなるのではないでしょうか。
積極的な来訪者の受け入れや観光を促進した街は守られるかもしれない。
だから、積極的に観光振興を進めればいいと思うのです。(前記事との矛盾。笑)
ただ、高度な産業なだけに観光振興を進めていく方法には思慮が必要で
情報流通がこれだけ早い世の中なだけに、短期的な経済至上主義に寄った急速な開発は避けるべきだし、
前時代的な手法だけに拠らず、いまの良質な観光業を考えて構築していくことが大事なのだと思います。
さて、良質な観光業とはなんでしょう?
考えて、最先端の観光業をつくっていきませんか。
※4月17日夜にオンラインイベント『多視点で考える観光と地域資産の関係#1』を、観光にまつわる様々な立場の友人知人と話し合うべく企画しました。ご興味あったら覗いてみてください。
https://kankoushisan.peatix.com/