「外の目線は大事」だとたまに言われる。
京都に住む前は、結構本気でそう思ってた。けど、京都に引っ越してきて数年経って
自分が住んでもお商売もしていない土地にこれだけあーだこーだ言われると
「外の目線」に懐疑的になる。
財政破綻をしている京都市だけじゃない。まちづくりや地方創生が叫ばれる地域では、行政経由で積極的に介入してくる「外の目線」に少なからず懐疑的になった経験があるのでは。
地域の事情を大して知ろうとせず、どこかの都会もしくは世界の事例を語りそのまま真似ることを助言する「外の目線」アドバイザーコンサル。
地域を知る過程をただ発信し、知名度のある人を連れてくることで満足する「外の目線」メディアコンサル。
地域特有の文化や慣習に問題があるとする、もしくは対話抜きで良さを独自に解釈して企画を上陸させる「外の目線」プロデューサーコンサル。。
地域に根差す事業体になったり、地域の会社に呼ばれてお越しになる場合、関係者はビジネスで何かしら元をとろうとするからまだわかる。
ただ、行政の委託で中途半端な「外の目線」コンサルが来られるとなかなか厄介だ。行政の委託となると地域全体の未来が関わる。そしてビジネスほど厳しい目線で効果測定は行われず、「おこなった」ことが価値となり、未来について責任が持たれにくい。
そして「外の目線」コンサルは、知名度を高めやすい都会から来がち。
他の地域とはだいぶ事情が異なった東京から来ることが多く、地域事情の理解にズレがあり
さらに人口の多い東京の視点を「教える」スタンスでいらっしゃるので
違和感を抱えたままプロジェクトは始まり、様々な地域の人々の時間の屍を後にして、静かに終わっていく。
ってネガティブなことを書き連ねましたが
ここで終わらせません。
最近、「外の目線」の使い方で唸った有隣堂(神奈川を中心に展開する書店チェーン)のYouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』を紹介させてください。
友人のススメで観始めたのですが、元神奈川県在住で有隣堂ユーザーだったこともあるからか、ぐんぐんと引き込まれてしまってしょうがない。。
同じように惹き込まれた人が他に多数いるようで、最近は週1000人以上チャンネル登録者数を伸ばしています。
『有隣堂しか知らない世界』については、こちらの文春オンラインや現代ビジネスの記事に背景や特長が詳しく書かれていますが、かいつまんで有隣堂の外の人でつくられたこのYouTubeの働きかけ方のすごさを挙げると
有隣堂だけではこの企画やメディアは作れなかった。責任を持って、この企画や動画群を世に出すところまで仕上げている。(毎回サムネイルや字幕の仕上がりに愛しか感じない)
⇒技術の提供有隣堂を知って、社員やバイト、文房具や文房具メーカー、出版社など関係者を主役に仕立てている。関係者の話を深堀し、外目線の想定内にまとめず想定外を引き出し、有隣堂の特有性を惹き立たせる。外目線より内目線の優位性と独自性を保っている。(出てくる社員さんやお取引先さんのこだわりやキャラクターの表現が良くて観るのクセになる。個人的に虫図鑑の回と蓄光文具の回はお気に入り)
⇒相手の深堀と、内目線と独自性の尊重司会のRBブッコロー(ミミズクのキャラクター)の話術は秀逸で、様々なネタを挟み込みながら、視聴者の質問やツッコミ(値段を確認して高い安いを忌憚なく言う)など心の声を代弁して軽快なトークで話を拡げてくれる。
⇒外目線の声を代弁し、さらに話を聴きだすパターン文房具メーカーや出版社などのお取引先や、小説や漫画家やガラスペン作家、他のYouTuber、さらにはヴィレッジヴァンガードなど競合他社を巻き込んだり、新卒入社の社員に素直な感想を訊く企画をつくるなどいろいろと目が離せない。
⇒第三者だからできる他者の巻き込みYouTubeのコメントやTwitter、ライブ配信まで駆使して、さらにもうひとつ外の目線を巻き込むことも忘れない。ライブ配信で視聴者からお題を受け付けたり、視聴者のブッコロー作画を(許可をとって)動画に入れ込んだり、双方向の参加型コミュニケーションをつくる。
⇒外の目線ミルフィーユ!
大して文房具に興味がなく書店に頻繁に行かない私が、なぜ有隣堂のYouTubeにはまってしまったか。それはやっぱり『有隣堂しか知らない世界』が見せてくれた有隣堂のユニークさのとりこになったからだと思う。
外目線は、他に倣うように個性を促すことではなく、その地域を知って個性を活かすことで機能する。
昨今の「外の目線」コンサルは、自身が脚光を浴びようとするあまり
人財も含めた地域の地域資産を知らなかったり、殺してやしないかと思うよ。
(なんなら京都市に関しては、在住者で様々な分野の人財がすでにいるのにその把握と活用が進んでいないことに私は納得がいかない。。)
街や都市はやっぱり、そこに住んで営むひとのものだから、行政は「外の目線」介入に慎重になってほしい。
で、私は有隣堂のYouTubeチャンネルに良いヒントが詰まってると思うので、
気になったあなた!よかったらこちらをどうぞ⇒有隣堂しか知らない世界
ちなみにこの前の東京来訪時につい有隣堂に寄って買い物しちゃいました。書店がふつうの書店じゃなくなる感じ、良いなぁ。
情報の魔法かも。